西宮市立図書館事業計画報告書

【概要版】西宮市立図書館事業計画外部評価報告書最終更新日:2018年6月1日

「西宮市立図書館基本的運営方針」に基づいて策定した「西宮市立図書館事業計画」の進捗状況について、平成28年度に点検、自己評価を行いました。そして平成29年度には、その結果に基づいた第三者による外部評価を実施し、その報告書を作成しました。

平成30年度以降は、外部評価による明確化した課題を踏まえ、市民生活に密着したより質の高いサービスの提供に努めます。また、結果を踏まえて次期事業計画(平成31年度~)を策定する予定です。

【概要版】西宮市立図書館事業計画外部評価報告書

目次

はじめに

「西宮市立図書館基本的運営方針」(平成27年4月策定)に基づき策定された「西宮市立図書館事業計画(平成27~30年度)」について、進捗状況を把握し目標達成につなげるとともに、今後の取組みの参考とするため、外部評価を実施した。

外部評価結果

(1)総評

評価に関しては、人口規模の似通った中核市である、近隣の尼崎市、姫路市、豊中市、高槻市、枚方市、東大阪市、の各市立図書館を比較対象とした(以下、「対照群」という)。

  • ア 全般的なサービス水準について

市民一人当たりの貸出冊数の全国平均は概ね6冊程度で推移してきたが、近年6冊を若干割込む状況にある。豊中市、枚方市、高槻市が8~9冊に位置し、西宮市は上位群に属し8冊弱から7冊弱へ減少しているが全国平均を上回っている。西宮市立図書館の総合力のレベルが一定程度の高さにあることを実証していると思われるが、懸念される点としては、減少傾向が大きいことである。


●市民一人当たりの貸出冊数の推移

(冊)

年度 H23 H24 H25 H26 H27 H28
西宮市 7.84 7.74 7.43 7.29 7.34 6.92
豊中市 8.68 8.40 8.44 8.38 8.79 8.70
姫路市 4.91 4.85 4.63 4.42 4.34 4.20
高槻市 8.62 8.43 8.42 8.13 8.58
枚方市 9.97 9.64 9.14 8.96 8.92
東大阪市 4.07 4.03 3.86 3.76 3.83
尼崎市 3.35 3.26 2.99 2.93 3.29

-:公開データなし

  • イ 貸出冊数の減少について

西宮市の市民一人当たりの資料費は、最下位の尼崎市についで低く、市民一人当たりの購入冊数は、最下位である。回転率(蔵書冊数/貸出冊数)は、高槻市の2.0に対し、西宮市は市民一人当たりの貸出冊数は高槻市よりも低いにもかかわらず回転率は3.4であり、市民ニーズに対して所蔵冊数が少ないという可能性を示している。


●図書費・購入数・蔵書数・回転率

中核市 市民一人当たり 回転率
貸出冊数/蔵書冊数(回)
図書費(円) 購入数(冊) 蔵書数(冊)
西宮市 99.5 61.1 2.14 3.4
豊中市 166.2 104.9 2.61 3.4
姫路市 136.6 78.2 2.41 1.8
高槻市 258.4 151.5 4.33 2.0
枚方市 143.3 89.8 3.10 2.9
東大阪市 107.7 99.8 1.38* 2.8
尼崎市 51.3 68.6 1.62 2.0

*大阪府立中央図書館の蔵書を加算した場合 5.40

  • ウ 市民の図書館利用の傾向について

西宮市立図書館における市民の貸出利用の特徴は、相対的に成人の利用が少ない。図書館利用の底上げを図るためには、貸出をはじめとして成人、特に働き盛りの利用を増加させる必要があることが類推される。


●貸出における児童書の一般書に対する割合

中核市等 割合(一般書/児童書)
西宮市 1.42
豊中市 1.77
姫路市 2.02
高槻市 1.79
枚方市 2.72
東大阪市 1.94
尼崎市

-:公開データなし

  • エ 職員と事務量

正規職員の司書と貸出冊数の比率をみると、大きな差がみられる。職員一人当たりの貸出冊数が多いことはその裏に、クレームなども含めて様々な業務が生じていることを示しており、専門的な知識、経験を必要とする負担も大きいことを示唆している。西宮市は、貸出冊数上位の自治体の中では、専門職の負担が大きい可能性を示している。


●職員構成

(人)

中核市等 正規職員
(うち司書)
正規司書率
(%)
非正規職員 委託派遣 合計
西宮市 30(12) 40.0 62 30 122
豊中市 45(43) 95.6 86 131
姫路市 25(14) 56.0 8 51 84
高槻市 25(12) 48.0 107 132
枚方市 52(37) 71.2 85 23 160
東大阪市 0 0 0 69 69
尼崎市 8 0 10 37 55

*:年間実労働時間から換算  -:公開データなし



●職員一人当たりの貸出冊数

(千冊)

中核市等 貸出冊数 対図書館全職員 対正規司書
西宮市 3,559 29 297
豊中市 3,524 27 82
姫路市 2,354 28 168
高槻市 3,035 23 253
枚方市 3,638 23 98
東大阪市 1,913 28 0
尼崎市 1,528 28 1,528
  • オ 専門的サービスについて

レファレンス(調査相談)について、問合せサービスの総数で検討すると、市民千人当たりの件数は、西宮市が28.9件、豊中市が213.0件、姫路市が254.5件であった。相互貸借における借受については市民一万人当たり、西宮市が1.92件、豊中市が2.19件、枚方市が7.21件であった。以上のように対市民の単純推計では、西宮市の実績は必ずしも高くはない。

しかし、レファレンスの内、専門性が必要とされる「調査」に限って正規司書1人当たりの処理件数を分析すると、西宮市は221件、豊中市176件(姫路市は「調査の数値」なし)となる。相互貸借(借受)では司書1人当たり、西宮市では7.75件、豊中市では2.05件、枚方市では7.95件である。司書1人当たりで換算した場合、対照群と大きな差はないばかりか西宮市の実績が上回るものもある。つまり西宮市の司書の個々人は対象群の司書と同様の働きをしていることになるが、司書集団の規模が対照群の司書集団よりも小さいことから、結果的に市全体のサービス数値では対照群に及ばないことになっているのではないだろうか。

  • カ 施設について

多くの自治体において、小規模な分館は資料提供という図書館の基本機能を必ずしも充分発揮できないことが問題となっている。一定規模の資料群とサービスの提供を保証できる地区図書館の設置を検討すべきであろう。

図書館内で様々に時間を過ごす市民が増加していることから、共有空間、ラウンジ、カフェなどの設置や、市民交流の空間として、ラーニングコモンズやメーカースペースを有する新中央図書館設置の検討も進めるべきである。

新館設置の検討と同時に設置場所についても地域の変化を考慮して慎重に検討すべきである。

*ラーニングコモンズ:電子情報や印刷物を含めた様々な情報資源から得られる情報を用いて議論を進めていく学習スタイルを可能にする「場」を提供するもの

*メーカースペース :創作活動を支援する公共空間

  • キ ボランティア支援について

ボランティア活動が活発な公共施設においては、プロデュースする担当職員の存在が不可欠だといわれる。図書館においてもボランティアの能力、経験を引き出すためには専任の職員が必要である。


(2)課題

これまで概観したように西宮市立図書館のサービス水準は、全国的には概ね上位に位置し、近隣中核市と比した場合、中の上に位置するといえるが、以下のような課題が存在する。

  • ①予算、特に資料費が少ない
  • ②正規職員の司書の割合が低い
  • ③相対的に成人、特に働き盛りの利用が少ない
  • ④施設、設備に関する市民ニーズへの対応

西宮市立図書館もサービス実績の低下、予算・人員の削減、サービスの低下という負のスパイラルへ堕ち込む予兆といえるものがないわけではない。安定的にプラスのサイクルへ転じるためには、首長をはじめとして、行政組織、議員、これら関係者自身の課題の解決に関して図書館の存在が有効であることをアピールし、理解を得る必要がある。

また、地域の課題解決のための各種サービスの有効性を折に触れ自らアピールすると同時に、マスコミやSNS等、あらゆる手段を用いてプロモートするべきである。

このような図書館の取組みは、自治体に対する市民のニーズに応え地域の課題を解決し、「まちづくり」に貢献することであり、特に働き盛りの市民の利用を増やすことに繋がる。結果として市民全体の図書館利用の増加を促すことになる。

そのためには、近い将来予想される予算削減、職員削減によって過重な労働環境となる前に、早急にサービスや業務の見直しを行い、優先順位の変更、効率化等を実施する必要がある。

以 上

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